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韓国は表現規制の先進国!?坂井崇俊編集長による韓国調査レポート(前編)


― 今回、韓国に表現規制についての調査に行かれました
はい、この11月に韓国に表現規制の調査にAFEEの最高顧問の山田太郎参議院議員とNPO法人うぐいすりぼんの荻野幸太郎さんと行ってきました。アポイント先は、これらの問題に関心のある国会議員やNPO法人や業界団体、そして、行政機関などを訪問してきました。今回の主な調査項目は、アチョン法(日本の児童買春・児童ポルノ禁止法)による創作物規制、米韓FTAによる著作権非親告罪化の影響、そして、通信の秘密について調査を行ってきました。

― 率直な感想を教えてください
韓国は表現規制の先進国の印象を受けました。今回、行った調査以外にも表現規制の面では、様々な問題があることが分かりました。例えば、テレビでは「たばこ」が規制されています。放送されるときはモザイクがかかっている。家の中では普通にみんなたばこを吸っているのに、ドラマなどの表現になると規制がかかってしまう、不思議なことですよね。日本は反面教師として韓国を学ばなければならないと思いました。その意味で、非常に有意義な視察になったと思っています。

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この図を見てください。アチョン法の創作物の処罰対象化と著作権の非親告罪化、ゲームシャットダウン制の影響です。逮捕者や取締りの人数は22倍、3.6倍、従業員数も▲25%と大きな影響が出ています。韓国社会が、これらの表現規制によって揺れ動いたのが端的におわかり頂けると思います。

― なるほど、韓国では市民生活にかなり大きな影響が出たのですね。
― ここからは、それぞれについて、詳しいお話しを聞かせてもらってもいいですか。まずは、アチョン法についてお伺いします。

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では、まずアチョン法について、基礎的なおさらいから始めましょう。図1-1を見てください。まずは、ここ数年の大きな流れについて抑えておく必要があります。2000年にアチョン法の前身が作られてから2006年の仮想物も規制をすべきとのレポートを経て、2012年に仮想物についてもアチョン法の対象となります。

ところが、先ほども行ったように2000以上が2~3ヶ月で逮捕されるという異常事態が起こりました。その結果、翌年には再度改正が加えられ仮想物については「明確に」児童と認識しうる場合を児童ポルノと見なすようになりました。この改正の際には、定義を明確化すると共に、罰則も重くなっています。この点も見過ごせません。

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現状のアチョン法を記載したのが図1-2です。日本の児ポ法とは基本的に似ていますが、禁止行為に「自慰行為」と「その他性的な行為」が含まれていて、かなり広範囲に規制がかかっています。特に「その他の性的な行為」には手を繋いだりキスをしたりということまで、性的な行為に含まれるかなどについても議論があります。

そして大きな違いが、仮想物も規制されていることです。この仮想物にはマンガやアニメだけではなく、成人が学生の制服を着て演技をすることなども含まれています。さらには、刑罰を見てください。児童ポルノの製造罪の場合、無期又は5年以上の懲役であり、日本の殺人罪(懲役2年以上)と比べても相当重いことが分かると思います。

― 韓国ではこういった点が議論になっていないのでしょうか

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議論になっています。2013年以降、憲法裁判所で議論されてきました。結果として創作物規制は合憲となりましたが、保守的な韓国の憲法裁判所において、違憲意見が4人もついたということを評価する向きもあります。(編集注:韓国の憲法裁判所では、9人の判事のうち、6人が違憲判断をしない限り、違憲とならない)

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一方、通常裁判所でもアチョン法について判決がいくつか出ています。2014年には、アチョン法の対象をかなり狭くする判決が出ています。図1-4を見て頂ければ、かなり限定していることが分かると思います。日本では①のみで、②については2016年3月に判決がでる予定のCG児童ポルノ事件で何らかの判断が下されるでしょう。また、③については、人格権の侵害という形で取扱うことが妥当だと個人的には考えています。

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結局、日本の児童ポルノ禁止法でも議論になった内容が、韓国でも表に現れています。児童の性被害からの保護という目的を考えれば、児相性犯罪と因果関係の強い人を排除するのであれば、まだ、分かります。それなのに、表現物を規制したことでおかしなことになっています。そもそも、創作物と性犯罪との因果関係は全く立証されていない(これは、韓国の女性家族部も認めています)ですから、明らかに間違っています。

また、罰則についてもかなり重たいと思います。成人女性に対する強姦は3年以上の懲役ですが、実在児童を強姦せずとも児童ポルに該当するマンガやアニメを製作するだけで、懲役5年以上で10年間の就業制限、20年間の身元登録が必要になります。実在と非実在の区別をせずにアチョン法を作ってしまった欠陥だと考えています。

ただ、このような状況にあるにも関わらず、アチョン法を改正しようという動きは一部に留まっています。実際に創作物規制を外すような法案が出されていますが、廃案になっています。

*本編はC89で発売されるAFEEマガジンvol4にのります。
後編(著作権非親告罪・青健法)に続く