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【都知事選向け特別公開】おいでよ傍聴! 東京都政傍聴日記 6

AFEEマガジン第13号より転載。
2020年7月の東京都知事選挙を前に、ここ数年の不健全図書指定の動きを知ってもらうため、AFEEマガジン連載記事「おいでよ傍聴!東京都政傍聴日記」をWEB公開します。


寄稿:南條ななみ

2016年(平成28年)の秋から、東京都が開催する審議会は原則公開する方針となり、不健全図書(青少年の健全な育成を阻害するおそれのある図書)の指定を決める会議・青少年健全育成審議会も同年11月から傍聴できるようになりました。この動きがあったのは、小池都政のスタート時「徹底的な情報公開」を掲げていたからです。ただし、青少年健全育成審議会においては傍聴できるのは会議の冒頭部分のみでした。

その後、2017年(平成29年)5月からは審議会の最後の部分も傍聴ができるようになりました。冒頭の約5分と最後の約2分、合計約7分傍聴できます。不健全図書や優良映画の審議をしている時間は非公開で傍聴できないので、傍聴人は会議室の外に出て待機場所で待つことになります。

傍聴の定員は初めは10名でしたが、2018年5月に16名に増えました。

2019年(平成31年)4月、東京都の青少年・治安対策本部は都民安全推進本部と名称を改めました。都民安全推進本部の若年支援課が引き続き青少年健全育成審議会の運営を担当しています。

月に一度開催される東京都青少年健全育成審議会は都民安全推進本部があるフロアの会議室で開催されています。会議室内に19人の審議会委員(会議のメンバーを委員と呼びます)、事務局の職員(会議を主催する都民安全推進本部の職員さん)5〜6人程度、それに傍聴人が入ると、会議中はドアを閉めるので、密閉、密集、密接の「3つの密」に該当します。

この原稿を書いている今は2020年4月です。審議会は2月に開催されたあと、しばらくお休みしています。もし審議会が再開されることがあったら、感染症予防の対策をして傍聴にきてください。

18歳以上の人は東京都青少年健全育成審議会を傍聴できます。傍聴の行き方はAFEEのサイト内ブログ(https://afee.jp/2017/05/29/7777/)に掲載されています。参考にしてください。

私は東京都青少年健全育成審議会を傍聴しました。傍聴して分かったことを、この記事でお伝えします。AFEEマガジンに寄稿するので、エンターテイメント表現の自由を守る視点から意見を書こうと思います。

なお、この記事の内容は南條ななみ個人の意見であり、AFEEの総意ではないことをあらかじめお断りします。

AFEEマガジン12号では2019年11月までの傍聴日記を書きましたので、その続きから。

ここから傍聴日記です。

◆令和元年(2019年)12月9日(月)

第714回東京都青少年健全育成審議会

傍聴人、3名。

委員16名が出席。欠席は小澤委員、川西委員、西尾委員の3名。(今のところ、どの委員が出席し、欠席したかは議事録に残らない。そのため傍聴の際に確認するしかない。)

審議時間、25分。(この記事では、傍聴できなかった時間、つまり傍聴人が待合スペースで待機させられていた時間を「審議時間」とする。厳密ではない。1〜2分の誤差はあるものとしてご容赦願いたい。)

不健全図書、1誌指定。

◆12月12日(木)報道発表(図書タイトル発表)

12月13日(金)告示日(指定開始)

〈指定図書〉

バカにつける薬がない!

★「バカにつける薬がない!」(竹書房)は、あずみつなさんのBLコミックス。3人の登場人物が織りなすドタバタコメディ。

後日ホームページに掲載された12月9日の第714回東京都青少年健全育成審議会の会議資料「都民からの申出一覧・11月分」によると、屋外広告についてメール3件、電話1件の申し出があったことが分かる。

秋葉原の看板の件(AFEEマガジン12号掲載「秋葉原広告取り下げ問題を整理する」に詳しい)について、傍聴できない非公開の部分で事務局から委員に報告されたもよう。議事録が公開され次第、確認したい。

◆令和2年(2020年)1月14日(火)

第715回東京都青少年健全育成審議会

傍聴人、8名。

出席の委員は15名。欠席の委員は4名。天日会長代理、早坂委員、川西委員、西尾委員。

審議時間、52分。

優良映画、1本推奨。

不健全図書、3誌指定。

映画の審議もあって、図書の審議が3誌もあって52分というのは、短いなと感じた。

〈推奨映画〉

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

◆1月16日(木)報道発表(図書タイトル発表)

1月17日(金)告示日(指定開始)

〈指定図書〉

最高にトロけた本気でホントの話

やましい恋のはじめかた

やましい恋のはじめかた初回限定版

★「最高にトロけた本気でホントの話」作者は不健全図書指定常連の八月薫さん。

BLコミックス「やましい恋のはじめかた」(笠倉出版)は小東さとさんの初単行本。幼なじみの二人の関係を描いた人気作品。本作の続編である「やましい恋のはじめかた2」は2019年11月に電子版配信スタートしている。また2020年3月には韓国語版(R19)が発行されている。

通常版と初回限定版を同時指定。同一作品であるが、東京都は指定した数を2誌として扱った。これについて後段で詳しく述べる。

◆令和2年2月10日(月)

第716回東京都青少年健全育成審議会

傍聴人、5名。

出席の委員15名。欠席の委員4名(早坂委員、小澤委員、森山委員、内田委員)。

審議時間、58分。

優良映画、1本推奨。

不健全図書、1誌指定。

〈推奨映画〉

恐竜が教えてくれたこと

◆2月13日(木)報道発表(図書タイトル発表)

2月14日(金)告示日(指定開始)

〈指定図書〉

40日間の調教開発生活

★「40日間の調教開発生活」はミツハシトモさんのBLコミックス。40日間とは学校の夏休みを意味する。この作品を原作とするドラマCD、いわゆるBLCDも出ている。また、続編となるコミックス「放課後の調教開発生活」も発行されている。

◆第717回東京都青少年健全育成審議会 延期

2月10日開催の第716回東京都青少年健全育成審議会のあと、しばらく審議会は開催されていない。何が起きていたか、備忘録として記す。

2月28日、青少年健全育成審議会の委員である栗下善行都議からTwitterに、3月11日に予定されていた審議会は4月に延期、3月分の審議内容は4月に持ち越しとなる旨の投稿があった。

その後、都民安全推進本部若年支援課はホームページ上に3月3日付で「第717回東京都青少年健全育成審議会の延期について」を発表した。その文面はこうあった。

「第717回東京都青少年健全育成審議会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、開催を延期することといたしましたのでお知らせいたします。

次回の開催は、令和2年4月13日(月曜日)を予定しています。」

4月13日の審議会を開催するためには、その一週間前の4月6日に出版業界自主規制団体との打合せ会を開催する必要がある。しかし、4月に入っても新型コロナウイルス感染症の感染拡大は収束しておらず、社会情勢から見て4月6日の打ち合わせ会はとても開催できそうになかった。審議会とセットである打ち合わせ会を延期するのであれば4月4日(金)には延期決定の告知が出るはずだと思ったが、出なかった。そのため、私は4月6日(月)の朝9時半ごろ都民安全推進本部に電話で問い合わせた。4月13日に予定されている青少年健全育成審議会は開催されるのかどうかを尋ねると、審議会の担当の職員はテレワーク中のため不在とのことであり、代わりに電話に出た職員が分かる範囲での回答となるが差し支えないかと聞かれたので、私は了承して回答をもらった。

ホームページに出ている3月3日の情報が最新情報である。新型コロナ感染症対応で日々状況が大きく変わっており、審議会については延期するかどうかも含め、まだ決まっていないと思われる。決まり次第ホームページでお知らせをするので、ホームページの更新を確認してほしい、との案内であった。

同じく4月6日の午後2時過ぎに栗下善行都議がTwitterに投稿し、都民安全推進本部は4月13日の審議会の延期を決めた旨を伝えた。

都民安全推進本部からは4月7日付で

「第717回東京都青少年健全育成審議会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、開催を延期することといたしましたのでお知らせいたします。

次回の開催については決定しましたらお知らせを掲載いたします。」

とホームページ上で発表(https://www.tomin-anzen.metro.tokyo.lg.jp/jakunenshien/singi/kenzensin/31koukai1/index.html)があった。

なお4月7日の夕方、安倍総理大臣から東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が発令された。

【前号の補足・1】

斉藤れいな都議審議会最終日の議事録が公開

さて、前号のAFEEマガジン12号の「おいでよ傍聴! 東京都政傍聴日記5」において、9月13日(金)第711回東京都青少年健全育成審議会について書かれた斉藤れいな都議のブログ記事「青少年健全育成審議会、お世話になりました。」を紹介した。

9月13日開催の第711回東京都青少年健全育成審議会の議事録は12月にホームページ上で公開された。私は前号の入稿後に議事録を確認したので、今回紹介したい。

第711回東京都青少年健全育成審議会議事録より抜粋

「G委員 1誌目のほうは、皆さんと同じで私も指定該当と思っているんですけれども、2誌目のほうは正直非常に難しいと思っております。私は、こういうたぐいの書物というのをふだん余り読みませんので、正直ここに上がってくるもので、私は全て卑わい感を感じてしまうんですね。自分の感覚的には、個人的には、そして子供を育てる母としては、全て指定になるべくものなんではないかと思うくらいの感覚があるんですけれども、自分の感覚ではなくて、ここに書いてくださっているいろんなご意見を見ていますと、ふだんさまざまな書物を恐らく読んでらっしゃる団体の方達が、これに関してさまざまなそのご意見の中で、卑わい感がないと感じられている方が多いということが、すごく自分の中で一つ引っかかっているところです。今回、団体の聴き取りの結果というところを見て、今回ちょっと指定非該当でお願いしたいと思っております。」

この時の自主規制団体からの聴き取り結果は、指定該当6、保留1、指定非該当8で、指定該当よりも指定非該当の意見のほうが多かった。

G委員は(つまり斉藤れいな都議であるが)この自主規制団体からの聴き取り結果を根拠として、諮問図書「彼女と僕のいえない秘密」に「指定非該当」との判断を示した。審議会の議事録でごくまれに「保留」の判断を見かけることはあるが、「非該当」は滅多に見ない。

東京都青少年健全育成審議会は、とても指定非該当と発言できる雰囲気ではない、と斉藤都議ではない別の委員からの意見を聞いたことがある。

おそらく斉藤都議にとっても非常に勇気のいる発言だったのではないだろうか。斉藤都議にはあらためて感謝申し上げたい。

再掲・斉藤れいな都議のブログ「青少年健全育成審議会、お世話になりました。」より抜粋

「さて、本日は第711回青少年健全育成審議会がありました。

今回をもって、私と奥澤都議は委員の勤めを終了させていただくこととなっております。

関係課職員の皆様、また委員の皆様には大変これまでお世話になりました。

都議となり初めて出席させていただいた審議会でもあり、数々学ばせていただくことがありました。

最後の審議会ということもあり、自分は委員として「個人的な感覚」を審議の根拠とすることに少しの懸念があることをお伝えさせていただきました。

この審議会で審議している優良映画の選定、また不健全図書の指定はそれぞれに基準となる条例があり、その条例の施行規則があります。

ただし、実際には審議は対象がこの審議会に上がってきた段階において、その対象は本審議会に上がってこなかった他の検討対象とされている図書と比較される術はもっておらず、委員にとっては「これは条例に照らし合わせて施行規則に沿うものであるか」という客観的な事実を他と比較して行うというよりも、その図書単体と向き合い感じた印象や衝撃を念頭に「これを子どもたちに見せたいか否か」という主観をベースとして審議を行うことになってしまう危険性もあるのではないかと感じる次第です。

人としての個人的主観と委員として求められる客観の行き来をする中で、あくまでも感覚論や印象論ではなく正当かつ明確な基準において審議が行われることを希望する想いを胸に、本日の審議を行いました。」

【前号の補足・2】

コンビニ成人雑誌の販売状況はどうなったのか

類似図書(コンビニ成人成年雑誌。青少年が立ち読みできないようにシール留め等をほどこした雑誌。コンビニによる自主規制であり、商品は18禁ではない。)2018年1月までにミニストップが、2019年8月末でセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社が取り扱いをやめている。

2019年11月に開催された第713回青少年健全育成審議会の会議資料「協力員による環境浄化活動状況」(10月報告分)によると、類似図書類を販売していたのは34店舗だった。コンビニ大手3社がコンビニ成人雑誌の販売を8月までにやめたが、今までと同じように調査を続けていて、売り場が減っている状況については調べていないのかと11月の審議会で山了吉委員から指摘されていた。

類似図書類を売っている店舗数の推移は次のとおり。

9月(8月報告分)85店舗

10月(9月報告分)37店舗

11月(10月報告分)34店舗

12月(11月報告分)11店舗

1月(12月報告分)4店舗

2月(1月報告分)1店舗

11月に委員から指摘された状況の調査に関しては事務局からの報告はまだない。

そもそも類似図書類(コンビニ成人雑誌)はコンビニ業界が独自に、それらの雑誌を18歳未満に売らないという自主規制をしているだけで、18禁の商品でもないし指定図書でもないのだから、本来は協力員が類似図書類を調査する必要はなかったはずとも考えられる。

ところで、2019年4月から2020年2月までの審議会の会議資料を確認すると、不健全指定された図書を売っていた書店は4月の資料で1店舗、1月の資料で1店舗、合計のべ2店舗しかなく、いずれも区分陳列されている。つまり、ほぼ1年間、数百人のボランティア協力員によって東京都内の書店を調査し続けた結果、青少年が手に取る状態で不健全指定図書を売っている書店は全く発見されず、棚分けの配慮をして適切に売っている書店が2店舗しか見つからなかった。

不健全図書指定されると、街の書店ではまず売られないということが判明した。東京都内は、ほぼ浄化されつくしている印象を受けるが、東京都はいつまで環境浄化活動を続けるつもりなのだろうか。ゴール地点を決めていないから、やめ時が分からず、いつまでも続けているのではないかと思えて仕方がない。

今号の事件解説

同一作品の通常版と初回限定版を同時指定

令和2年の最初、1月の指定図書は「やましい恋のはじめかた」通常版と初回限定版が同時に指定された。同一作品であるが、東京都はこれを2誌とカウントした。初回限定版には描きおろし漫画の小冊子(総ページ数20ページ)がついている。通常版と初回限定版の違いは、小冊子の有無である。

通常版と付録をつけた初回限定版とを発売するのは、よくある販売促進の手法だ。この手法が不利に働くような判断を行政がくだしたことになる。民間の経済活動の自由を侵害する重大な決定といえる。出版社が委縮して、初回限定版を出せなくなるということになりかねない。

そもそも不健全図書の指定をするということは、違法なことをしていない出版社に対して、東京都が後出しでそれを違法だということにして、行政処分をしているも同然なのだ。同一作品の通常版と初回限定版2誌同時指定を行った東京都の態度には、制度の運用に対する慎重さはみじんも感じられない。

不健全図書指定の制度には、1年間に6冊指定された発行者は名前を公表されるというペナルティがあり(東京都青少年の健全な育成に関する条例第九条の三)、一度の指定で2冊とカウントされれば出版社にとって不利になる。不健全指定の決定は東京都が一方的に行い、出版社に弁明の機会は与えられない。

極端な例えを挙げるが、もし仮に、全年齢向けBLコミックスを発行する出版社がA社とB社の2社だけになったとして、月に一度の審議会でA社の本とB社の本を交互に指定していくと、A社もB社も年に6冊指定されてしまうことになる。出版社がどんなに東京都の指導に従い、自主規制をしても意味はなく、東京都は全年齢で販売された商品の中から選んで指定図書を決定するのだから、東京都が不健全指定の制度をやめない限り、出版社が割を食う仕組みになっている。条例を改正しない限り出版社が守られる道はない。

そして現実に、東京都が規制をし続けることにより、すでに出版社が委縮し、全年齢向けの出版をやめる動きはある。このままいけば本当に全年齢BLコミックスを出版するのが2社だけになってしまうのも時間の問題だ。

為政者が権限を濫用していることを問題だとは思わない、そういう感覚の人物が現在、都民安全推進本部の若年支援課にいるようだ。

[おわりに]

この原稿を書いている今は2020年4月です。コミックマーケット98は中止になり、東京オリンピック・パラリンピックは1年延期となりました。7月に東京都知事選挙と都議会議員補欠選挙を控えています。

この選挙は大事な選挙です。東京都青少年健全育成審議会を真に青少年のためになる運用に変えてもらうことが悲願です。何なら不健全図書指定の制度を撤廃してもらっても構いませんが。

この際に、私の主張をここに記しておきます。

主張・1

出版社が自主規制を強めてはいけない理由

出版社が自主規制を強めることは漫画家を守ることにはなりません。よく「漫画家を守るためにR18マークをつけて発売すればいい」「出版社が18禁の基準を設ければいい」などの意見を見かけます。ですが、自主規制を強めて、例えば全年齢向けで描いてよい表現の基準を決めるとします。それを決めても、東京都が不健全図書の指定をやめる理由にはなりません。出版社がどんなに自主規制を厳しくするとしても、東京都は全年齢向けに販売されている商品の中から選んで不健全図書を決めますから、意味がないどころか、今より悪い状況を出版社が自ら招くことになります。自主規制を強めるということは、表現の自由を手離すことにほかなりません。絶対にしてはならないことです。

また、このまま東京都の言いなりで、東京都の指定するがまま、出版社が打撃を受け続けていいとも思いません。

主張・2

科学的根拠のない条例を制定してはならない

東京都青少年の健全な育成に関する条例が制定されたのは1964年(昭和39年)です。56年前です。

これはエロマンガ研究家の稀見理都さんから教えてもらったのですが、そもそもなぜ雑誌の取り締まりを始めたかというと、不良少年達が何をしているか調べたら雑誌を読んでいることが判ったので、雑誌を取り締まれば不良少年が減るのではないか、ということになったらしいです。不良少年がパンを食べていたからパンを規制することにした、というような話です。

56年前、こんな無茶な条例が通ってしまったのでしょうが、さすがに現代においてもこの無意味な条例をいまだに運用しつづけているのは非常に疑問があります。

今般、香川県で制定されたネット・ゲーム依存症対策条例にも感じたことですが、科学的根拠に基づかない規制条例を制定するべきではありません。条例を作って対策したつもりになっても、実際には対策になっておらず、支援が必要な人には支援が届かず、困っている人が放置されたままになります。全く無意味なばかりか、無意味な条例を通すために税金を投入して会議を開くのですから、損害でしかありません。

行政の取組は効果把握できることを前提に制度設計しなければなりません。東京都の職員は都民に資する取組を行うことが務めであり、費用を税金で賄っている以上、「効果は不明だが、条例で決まっているから続ける」ということは断じて許されません。不健全図書指定をいつまでも運用することは明らかに税金の無駄遣いなのです。

主張・3

不健全指定ゼロの回が一度もないのは不自然

東京都では毎月100冊の本を買い、1〜2冊の不健全図書を指定しています。

これについてAFEE編集長の坂井さんが計算してくれました。買ってくる本のうち不健全図書となる確率を1.5%として、毎月100冊の本を買い続けて、5年間60回の審議会で毎回必ず1冊以上の不健全図書指定をし続ける確率(つまり不健全図書が該当なし(0冊)となることが5年間一度もない確率)は0.000032%だそうです。ほぼありえないとのこと。

東京都は毎月1冊か2冊の本を選んで不健全指定してきましたが、実はそれこそが行政の取組として不自然だったのです。今まで指定された本は「青少年の健全な育成を阻害するおそれのある」という基準に該当したから指定されたわけではなく、最低1冊は不健全図書の指定を出すという目的が先にあり、その目的に見合う本を選んでいた、というのが事実に近いのではないでしょうか。

「東京都青少年健全育成審議会の運営等」あるいは「東京都青少年健全育成審議会運営要領」という審議会のルールを改定する機会は二年に一度、審議会の中であります。次の機会は2020年10月の審議会の予定です。もし審議会が10月までに再開しているのであれば、都合のつく人は傍聴にきてください。傍聴する時間はいつもと違い、1時間程度におよぶかもしれませんので、そのつもりで来てください。

昨年から、東京都に不健全図書として指定されたBL作品を読むという趣旨で、有志による指定BL読書会が開催されていると聞いています。指定された作品の中身を実際に読んで、一人一人が考えることは大事です。そこまでいかなくても、作品に触れるだけでもよいと思います。大勢が一か所に集まる読書会はしばらく難しいと思いますが、何らかの形で読書会が広まってくれたら嬉しいです。今後もより多くのかたに不健全図書制度問題、有害図書制度問題に関心を持っていただけることを願っています。

おいでよ傍聴!

寄稿:南條ななみ

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