AFEEマガジン第8号より転載。
2020年7月の東京都知事選挙を前に、ここ数年の不健全図書指定の動きを知ってもらうため、AFEEマガジン連載記事「おいでよ傍聴!東京都政傍聴日記」をWEB公開します。
寄稿:南條ななみ
2016年の秋から、東京都が開催する審議会は原則公開する方針となり、傍聴できるようになりました。誰が何と言おうと、この動きは小池都政での出来事であるのは間違いありません。権利は行使しようと思います。
というわけで、東京都の審議会や都議会の委員会などを傍聴しました。AFEEマガジンに寄稿するので、エンターテイメント表現の規制に関連するかもという話題について書こうと思います。
なお、9月1日には千葉市青少年協議会を傍聴したので、それも【番外編】としてご報告します。
前号では2017年7月までの傍聴日記を書きましたので、その続きから。
ここから傍聴日記です。
平成29年(2017年)8月7日 第686回東京都青少年健全育成審議会
傍聴人3名。先月まで審議会の傍聴人が1人しかいなかったため今後を危惧し、7月18日のイベント「【緊急開催】表現規制反対派から見る2017都議選」(高円寺パンディット)にて「傍聴人がいなすぎてマズイと思う」と相談したところ、うぐいすリボン理事・荻野幸太郎さんがFacebookで傍聴を呼び掛けてくださるなど、おかげで傍聴人が先月よりも増える。
7月の都議選にともない、都議の委員は一旦辞任となった。後日あらためて選出となるため、今回は都議の委員は在籍していない。
会の冒頭、7月に刑法が改正されたが不健全図書の指定の範囲は変更なし、と説明あり。
優良映画1本推奨。不健全図書3誌指定、1号基準(旧基準)。
9月11日 第687回東京都青少年健全育成審議会
傍聴人6名。待合いスペースは椅子6つなので席が埋まる。
都議4名が委員として就任。都民ファーストの会東京都議団・奥澤高広委員、斉藤れいな委員。都議会公明党・のがみ純子委員。東京都議会自由民主党・早坂義弘委員(早坂義弘委員は7月以前に引き続いて再選出)。また、7月に退任したPTAの谷代委員の後任・麻生委員が就任。
新任の委員に丁寧に説明をしつつ会が進む。業界団体の位置づけの資料が配付される。これは、6月の審議会で要求されていた資料。
1誌指定、1号基準(旧基準)。
閉会後、傍聴人有志で会食し、マンガ論争主宰・永山薫さんのお誕生日を祝う。
9月15日 都議会総務委員会
所管全局、事務事業について説明。都議選後、最初の委員会だからか、各部局が、うちの成り立ちはこうです、仕事の内容はこうです、と説明を行う。青少年・治安対策本部は青少年問題が深刻化したことから創設された由。
西沢けいた委員、青少年・治安対策本部に対し資料要求、不健全指定図書の種類等の一覧。
10月10日 第688回東京都青少年健全育成審議会
傍聴人10名。9月20日のニコニコ生放送「第279回前参議院議員・山田太郎のさんちゃんねる」で審議会の議事録について取り上げられた。その放送の影響なのか、傍聴希望者が大勢集まり、定員に達したため、あとから来た人は入れないという事態に。待合いスペース一カ所では足りず二カ所になり、二カ所ともいっぱいに。
傍聴受付を済ませると、私だけが呼ばれて奥へ通され、鍋坂健全育成担当課長と面談。7月10日の第685回審議会の議事録から「BL」の文言が削除されたという件がネットで話題になり(私@nnanjohのツイートのせいだが)、その件で説明をしようにも、誰かに質問されたわけでもないので誰にも説明のしようがなく…、と、困っていた様子。7月10日の傍聴人は私一人だったことから、ネットに投稿した人はこの人だろう、と特定したもよう(念のため断っておきますが、都の職員さんとコンタクトが取れるのは望ましいことなので、私は都の職員さんに特定されたところで構いません。嫌ではありませんでした)。なお、「山田太郎のさんちゃんねる」の放送内容は確認済みとのこと。
実際の発言は「BLが許せない、店頭に置かないでほしい」という意図ではけっしてなく、当日の諮問図書に人格否定の描写があったことから、「人格否定の描写は許せない。子供の目に触れないようにしてほしい。」という趣旨だった、とのこと。また、議事録から「BL」の文言を削除したのは、傍聴人もいる公開の部分で諮問図書にBL作品が含まれることが判ってしまう発言をしたことが問題視され、発言した本人も反省し、削除に至った、ということのよう。
鍋坂課長からもう一点説明。別件で、審議会のある委員に、私から軽い情報提供のつもりで「審議会の答申に対してメールで意見を送ったが、取り上げられたかどうか。取り上げられていればよい。」という旨のFAXを送ったところ、質問と受け止められたそう。その委員は「審議に関わることなので、この質問に答えたらマズイのでは?」と重く受け止め、都に対応を一任したとのこと。というわけで、鍋坂課長から回答をもらうことになった。その回答とは「都に寄せられたご意見は審議会に報告されます。議事録をお待ちください」と。
この日の審議は一時間ほどかかった。その間、傍聴人は待合いスペースで待たされる。時間の都合で諦めて帰った人も。
2誌指定、何号基準に該当するか傍聴人には知らされず。審議会のあと個人的に職員さんに質問するも、「何号基準かも合わせて答申発表するので発表までお待ちください」と。
後日の答申で、1誌は1号基準(旧基準)と2号基準(新基準)に該当、もう1誌は1号基準該当と分かる。2号基準(新基準)の指定は3誌目であるが、審議会閉会部分が傍聴できるようになった2017年5月以降では初である。
斉藤れいな委員のブログ10月11日付の記事に審議会の様子について記載あり。
10月17日 都議会総務委員会
傍聴しておらず。この日、西沢けいた委員、青少年・治安対策本部に対し、表現規制が進んでいないか確認する内容の質疑した由。書き留めておく。
11月13日 第682回東京都青少年健全育成審議会
傍聴人10名。15時35分開始。
15時50分頃、傍聴人退室。
16時48分、傍聴再開。
16時53分頃閉会。
優良映画1本推奨。2誌指定、1号基準(旧基準)。審議時間に一時間かかったので、すわ2号基準が出るのか、と心配したが、1号基準だった。
11月21日 都議会経済・港湾委員会
産業労働局が質疑を受ける日だが、このような場でビッグサイト問題(五輪大会で展示会場が使えなくなる問題)の質問が出ない。もはや誰も質問しないということなのだろうか。
と思っていたところ、知事与党の都民ファーストの会東京都議団からは厳しい質問はできないので、他の会派からの厳しい質問を期待したい、という意見を聞く。なるほど、そういうものなのか。
【番外編】
9月1日 千葉市青少年問題協議会
傍聴人1名。
コンビニエンスストアでの成人雑誌販売方法について。この件、協議事項ではなく、報告事項に入っている。
曰く、千葉市は雑誌の表紙にカバーをかける販売方法を試験的に行う予定であるが、コンビニ店舗と折り合いがつかず、実施に至っていない。堺市の例がモデル的になっており、コンビニ業界でこの件は非常に抵抗が強いとの由。
コンビニ成人雑誌対策は決定事項なので、なんとしても実施しなければならない。コンビニは緊急時のライフラインとして日頃から市に協力してもらっており、コンビニとの関係は良好に保ちたい。店に負担をかけない方法のアイディアを出すなどして交渉を続ける。というのが、9月1日時点の青少年問題協議会の姿勢。
具体的にどういう理由でコンビニ業界の抵抗が強いのかは判らなかった。堺市の例では「表現、出版の自由に反する」など抗議が来たので、同様の騒ぎになることをコンビニ業界は恐れている、ということであろうか。
ネット報道では千葉市はカバー販売を5月に試行という話だったので、まだ実施できていなかったとは予想しておらず、傍聴して驚いた。
【おまけ】
9月22日〜10月22日 「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正に関する意見募集
期間中に寄せられた意見が集約され、11月24日公開される。合計25通、延べ47意見集まったらしい。私も意見を送ったが、反映されているのか、いまひとつ実感が湧かない。
[おわりに]
ふたたび、東京ローカルの話で恐縮です。おそらく、この本が出ている頃には、自画撮り被害対策の青少年健全育成条例改正議案が都議会に提出され、可決されていることでしょう。
今年不健全図書に指定された本で、私が個人的に指定に納得いかない作品について、7月30日に青少年・治安対策本部にメールで意見を送りました。9月11日の審議会で報告され、その議事録は11月17日に公開されています。審議会のサイトでは議事録のほかに審議会で配付された資料も公開されていますので、ご覧ください。
東京都の青少年健全育成審議会の傍聴人が定員の10人に達したことは、よいことだと思います(後から来て入れなかった人は、お気の毒なのですが)。たとえ一過性でも「都政に注目している人が大勢いる」とアピールできたと思います。もちろん、一過性ではなく、継続してアピールできれば、もっとよいと思います。
条例改正を話し合うのは青少年問題協議会ですし、条例改正議案を提出する前には都議会の常任委員会などで報告されたり質疑されたりします。関心のある方は足を運んでみてください。総務委員会の傍聴は定員20名で、青少年健全育成審議会に比べると席に余裕があってオススメです。
ただ、常任委員会の開催日は直前(およそ一週間前)に発表されるため、スケジュールを調整しやすい人のほうが傍聴しやすいかと思います。
ちなみに、千葉市の青少年問題協議会は年に一回開催のようです。千葉市のコンビニ雑誌の話を追いかけるには、市長定例会見の内容を確認するのがよさそうですね。イオンの話は、イオンに問い合わせるのもよいかも、と思います。
審議会の傍聴の行き方はAFEEマガジン7号に掲載されています。ご参考にしてください。
おいでよ傍聴!
南條が傍聴した会議および参加した関連イベント一覧
平成29年 7月18日 |
【緊急開催】表現規制反対派から見る2017都議選(高円寺パンディット) |
8月7日 | 第686回東京都青少年健全育成審議会 |
9月1日 | 平成29年度千葉市青少年問題協議会 |
9月11日 | 第687回東京都青少年健全育成審議会 |
9月15日 | 東京都議会 総務委員会 |
9月18日 | コンテンツ文化研究会主催イベント「表現規制10年史-「非実在青少年」からマンガを守れ」 |
9月20日 | ニコニコ生放送「第279回前参議院議員・山田太郎のさんちゃんねる」配信 |
10月10日 | 第688回東京都青少年健全育成審議会 |
10月31日 | 第31期東京都青少年問題協議会 |
11月13日 | 第689回東京都青少年健全育成審議会 |
11月21日 | 東京都議会 経済・港湾委員会 |
11月30日 | 東京都議会 総務委員会 |