来たる夏の参議院議員選挙に向けてAFEEでは各国政政党向けに12の政策を提言いたしましたのでご報告します。
2025年参議院議員通常選挙に向けた政策提言
エンターテイメント表現の自由の会 代表 坂井崇俊
女性支部 代表 岩永千絵美
AFEE(エンターテイメント表現の自由の会)は2013年からマンガ・アニメ・ゲームなどのエンターテイメント表現の自由を守る活動を行っている団体です。弊会の活動である「#表現の自由を守るための約束」には多くの地方議員に賛同頂き、また、年二回行っているコミックマーケット前での超党派街頭演説にも多くの国会議員・地方議員の方に演説をして頂いております。弊会では来る夏の参議院選挙について、以下12の政策提言を行います。
1.国連サイバー犯罪条約の留保規定の適用について
国連サイバー犯罪条約(新サイバー犯罪条約)はマンガ・アニメ・ゲームといった実在しない児童の描写を児童ポルノの定義に含むという内容になっており、創作物規制につながることから、当該部分についての留保規定の適用を前提として署名・締結するべきと考えます。
2.「児童ポルノ」の定義および名称について
児童ポルノ禁止法における児童ポルノという名称は、あたかもそういったポルノの分野が存在することを想起させるとともに、”実際の児童”に対する性虐待を網羅的にカバーしていない。そこで、児童ポルノ禁止法において、児童ポルノという名称を児童性虐待記録物に改め、性虐待が行われた音声や顔のみの映像など現在規制対象外となっている記録物にも対象を広げると共に、現在同様、実際の被害を伴わない創作物については規制の対象としないことを明確にするべき。
3.クレジットカード会社による販売商品の自主規制について
近年、クレジットカード会社による成人向けコンテンツなどの決済中止を販売事業者に通告し、販売事業者がやむなく当該商品の取り扱いを中止するというケースが報告されている。これに対しオンラインでは主要な決済手段がクレジットカードであり、消費者基本法で定める消費者の自主的かつ合理的な選択の機会確保のための法整備を行うべきである。
4.男女共同参画を理由にした創作物規制について
近年”萌え絵”などの創作物が女性の権利を侵害するまたは、女性に対する性犯罪を助長する可能性があるなどとして、創作物を規制すべきとの議論がある。前半の主張は創作物に人権はないため、女性の権利侵害という主張は法的に整理しにくい。後半についても可能性の段階で憲法にも保障された表現の自由を制約する理由とはなり得ないため、このような理由による創作物規制は行うべきではない。また、ジェンダー・ギャップ指数(GGI)についてはその算出方法が必ずしも適切では無いとの指摘もあり、安易に当該指数を日本の男女共同参画の進捗度として用いるのは適当ではない。
5.女子差別撤廃条約選択議定書の留保判断の継続について
日本は過去に女子差別撤廃委員会よりマンガやアニメ・ゲームについて科学的根拠に基づかず、日本の文化にそぐわない価値観・道徳観による勧告を受けています。個人などの通報制度を認める女子差別撤廃条約の選択議定書については、過去の勧告と同じような理由で判断をされることが懸念され、批准するべきではないと考えます。
6.わいせつ物頒布等罪の廃止等含めた議論について
刑法175条(わいせつ物頒布等罪)は適用範囲が広く、表現の自由に対して強い委縮効果を及ぼしている。また、その保護法益やわいせつの定義などについて多くの議論がなされているところである。表現の自由に強い委縮効果を及ぼす刑法175条について、その廃止に向けたメリットや問題点、課題などについての議論を国会内外において開始するべきである。
7.ネット上の広告の制限について
ネット上の広告についての制限は、法規制によって一律に行うのではなく、民間の事業者の努力や業界内の自主的な基準により、サイト運営者や保護者を含めた消費者の選択が尊重される形で対応されるべき課題である。とりわけ青少年保護の観点からは、広告表示を制限するためのフィルタリングサービスやペアレンタルコントロール機能などの活用・普及が重要である。
8.オンラインカジノサイトへのブロッキング対応について
国内からオンラインサイトにアクセスし賭博行為を行うことは違法であるが、多くの人が違法性の認識なくアクセスしていたなどの結果もあり、違法性についての啓もうを行うなどの手段が残されている。憲法が定める通信の秘密を侵してまで、ブロッキングを行うべきではない。
9.匿名表現の自由について
特にインターネット上での匿名表現は表現の多様性を促進し、表現者の属性や人格に関係なく表現する権利を保障するためにも必要な自由である。一方、誹謗中傷や名誉毀損といった犯罪や不法行為についても、裁判所を通じた発信者の特定が容易になるなど、十分な対策が行われたとの認識である。
10.クリエイターの地位向上について
マンガやアニメ、ゲーム等クリエイターの待遇を巡っては十分でないとの調査結果もあり、クリエイターに対する支援を実施するべきである。特にインボイス制度導入に伴う収入減少防止および二次使用料をクリエイターが受け取ることができるような環境整備を行うべきである。
11.パロディ・二次創作の合法化について
現在、日本の著作権法においてパロディや二次創作は曖昧な立場にあるという認識である。近年、フランスやイギリスなど多くの国が二次創作などパロディを合法化している。日本も二次創作などパロディを合法化することでクリエイターが萎縮すること無く活動できるようにするべきである。
12.コンテンツアーカイブの仕組みの導入について
マンガやアニメ・ゲームは日本の重要なコンテンツである。しかしながら、その制作の過程で用いられた原画やネーム、設定資料などの中間成果物や最終的な創作物について網羅的にアーカイブされておらず、重要な資料が散逸・消失している実態がある。このような状態を回避するためにメディア芸術ナショナルセンター構想など、コンテンツアーカイブのための仕組みを構築するべきである。