AFEEでは、岐阜県で行われている第5次岐阜県青少年健全育成計画(案)に対する意見募集に応募いたしました。
Discordに寄せられた会員の皆さんの意見をベースに、Discordの公開役員会で議論致しました。
「岐阜県青少年健全育成計画」改定案に対する意見
エンターテイメント表現の自由の会代表 坂井崇俊
弊会は「岐阜県青少年健全育成計画」改定案について意見致します。
P1.第1章 計画の策定にあたって
1 .計画策定の趣旨
健康被害を及ぼすインターネットへの依存(以下、ネット依存という)等への対策は、スピード感を持って対応すべき課題となっています。
国会における厚生労働省の答弁によると、令和 3 年時点でネット依存を定義する知見は承知していないとある。定義が確立されていない「ネット依存」への対応を含めることは、計画全体の信頼性を損ねかねないため、この内容は計画から削除するべきである。
【参考】
第 204 回国会 参議院 内閣委員会 第 4 号 令和 3 年 3 月 16 日(抜粋)
○政府参考人(赤澤公省君;厚生労働省社会援護局障害保健福祉部長)
ネット依存、スマホ依存につきまして、現時点でこれを個別に定義する知見は私ども承知していないところでございます。
P14.第3章 青少年を取り巻く現状
2 情報化社会の進展
(3)ネット依存、ネットいじめの状況
本県の「情報モラル調査」(令和5年度)によると、本県におけるネット依存(傾向)の可能性が高い中学生の割合は、11.2%であり、令和元年度(8%)より 3.2 ポイント増加、高校生の割合は、12.7%であり、令和元年度(10.5%)より 2.2 ポイント増加しています。また小学生の割合は最も高く 15%であり、令和3年度より 2.5 ポイント増加しています。
※ ネット依存(傾向)
岐阜県教育委員会が行っている「情報モラル調査」において、ネット依存傾向を尋ねた次の 8 項目のうち、「はい」と答えた数が合計 5 つ以上あった生徒の割合
①インターネットに夢中になっていると感じていますか。
②満足を得るために、インターネットを使う時間をだんだん長くしていかなければならないと感じていますか。
③インターネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全にやめようとしたが、うまくいかなかったことがたびたびありましたか。
④インターネットの使用時間を短くしたり、完全にやめようとしたとき、落ち着かなかったり、不機嫌や落ち込み、またはイライラなどを感じましたか。
⑤使いはじめに意図したよりも長い時間インターネットに接続した状態でいますか。
⑥インターネットのために大切な人間関係、学校のことや、部活動のことを台無しにしたり、危うくするようなことがありましたか。
⑦インターネットへの熱中のしすぎを隠すために、家族、学校の先生やその他の人たちにうそをついたことがありましたか。
ネット依存(傾向)の定義は YDQ(THE YOUNG DISABILITY QUESTIONNAIRE)をベースにしたものと思われるが以下の点から問題がある。
・設問はヤングのものを改変しており、(日本国内でも複数の指標が存在するが、いずれも YDQ を原型としたもので、その設問が改変されている以上科学的な根拠は存在しないと認識している)科学的な裏付けは全くないといえる。そのような定義であたかも科学的根拠があり、定義に当てはまると依存症であるかのような表現は計画に掲載することはふさわしくない。
・YDQ が考案されたのは 2000 年より前のものであり、インターネットがインフラとして定着した現在、その指標を使うことが合理的であるかの議論もなされている。
【参考】
「インターネット中毒: まじめな警告です–1998/9/1
キンバリー・S. ヤング (著), Kimberly S. Young (原名), 小田嶋 由美子 (翻訳)
毎日新聞社
P59.第3章 青少年を取り巻く現状
7 課題認識
情報化社会のより一層の進展に伴い、スマートフォンやタブレット端末などのデジタル機器が急速に普及したことで、ネット依存やSNSを利用したいじめ、SNS等に起因する事犯の被害児童数やトラブルの増加、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども、いわゆるヤングケアラーの課題も顕在化しており、今後も、周囲の大人が早期に青少年の困難な状況に気づき、状況に応じた切れ目のない支援につなげていくことが必要です。
P95.第5章 青少年育成支援施策の展開
基本方針III 青少年の健やかな成長を支える社会環境の整備
基本施策1 安全・安心な社会環境の整備現状と課題
長時間のネット利用により視力の低下だけでなく、日常生活や人間関係にも支障をきたすネット依存の傾向があるこどもが増加傾向にあります。
P97.第5章 青少年育成支援施策の展開
基本方針III 青少年の健やかな成長を支える社会環境の整備
基本施策1 安全・安心な社会環境の整備具体的な施策
(1)安全・安心なインターネット利用の促進④ネット依存への対応
(担当所属:私学振興・青少年課、県民生活課、学校安全課、保健医療課)
・ネット依存に関する理解を深め、依存防止につなげるため、青少年や保護者、学校関係者、相談窓口等の支援者を対象とした研修会等を開催し、自らの生活を見直したり、家族の望ましいかかわり方などを学んだりする機会を提供します。
・ネット依存傾向にある青少年やその家族に対し、岐阜県青少年SOSセンターや岐阜県精神保健福祉センターで相談を受け付け、専門機関の紹介、家族教育の開催により適切な治療につなげるなど、必要な支援に努めます。
・スマートフォン、SNSの利用など情報モラルについて学ぶ家庭教育学級の開催を推進します。
・小学校から高等学校における情報教育の一層の充実を図り、携帯電話やスマートフォンの適切な使い方等を学ぶ情報モラル教育とともに、ネット依存の現状や対策等を学ぶ予防教室を実施します。
・ネット依存等について記載した「情報モラル啓発リーフレット」や教職員用の指導資料を作成し、県内全ての小・中・義務教育学校、高等学校に配布するとともに指導を行うことで、児童・生徒への未然防止のための啓発を行います。
国会における厚生労働省の答弁によると、令和 3 年時点でネット依存についての治療・予防に関する確立した科学的根拠・科学的知見は承知していないとある。適切な対応についての根拠・知見が確立していない中で、科学的根拠を伴った治療や予防が存在するかのような記載は改めるべきである。
【参考】
第 204 回国会 参議院 内閣委員会 第 4 号 令和 3 年 3 月 16 日(抜粋)
○政府参考人(赤澤公省君;厚生労働省社会援護局障害保健福祉部長)
ゲーム依存、ネット依存、スマホ依存についての発症のメカニズムは現時点で確立した科学的知見は承知しておりません。
ゲーム依存、ネット依存、スマホ依存について、現時点で治療、予防に関する確立した科学的根拠、科学的知見は承知しておりません。今後、これらの発症のメカニズム等の解明につなげるよう、更なる研究により科学的知見の集積を図る必要があると考えております。
P97.第5章 青少年育成支援施策の展開
基本方針III 青少年の健やかな成長を支える社会環境の整備
基本施策1 安全・安心な社会環境の整備具体的な施策
(2)健全な青少年を育む社会環境づくりの推進
① 有害図書類等の調査指定・規制強化(担当所属:私学振興・青少年課)
・青少年に有害な影響を与える興行や図書類等を青少年健全育成条例に基づき指定したり、優良興行等の推奨を行ったりして、健全な社会環境づくりを推進します。
・有害環境の浄化や健全な社会環境づくりについて、業界・事業者の協力により、自主的な取組を促進します。
P112.第6章 数値目標
Ⅲ 青少年の健やかな成長を支える社会環境の整備
1 安全・安心な社会環境の整備立入調査における有害図書の区分陳列の遵守率(遵守店舗数/調査店舗数)
計画策定時(令和 5 年度末) 87.4%
目標値(令和11年度末) 95%
「有害図書類等の調査指定・規制強化」の施策として、有害図書の指定基準を追加・拡大することには反対である。有害図書の規制は、表現の自由・青少年の知る権利を制限するものであり、これを濫用して県民の権利を不当に侵害するべきではない。規制強化に県のリソースを割くことは実効的な施策とは思われない。
なお、有害図書の指定基準を追加・拡大する施策を行う意図がなく、立入調査における有害図書の区分陳列の遵守率の向上を目指す施策を行う意図のみがある場合は、「有害図書類等の調査指定・規制強化」の表現を「有害図書類の区分陳列等の実態把握および事業者に対する周知徹底」等の、より具体的な表現に改めるべきである。