立憲民主党の枝野代表よりが女子差別撤廃条約や女子差別撤廃委員会による政府への勧告についての研修を、最終的には都道府県連まで含めて順次進めるとの発表がありました。過去に日本は「女性に対する強姦や性暴力を内容とするテレビゲームや漫画の販売を禁止」「固定観念が引き続き女性に対する性暴力の根本的原因であり、ポルノ、ビデオゲーム、漫画などのアニメが女性や女児に対する性暴力を助長している」などの勧告を受けていることから、本件について、立憲民主党の所属国会議員153名に対して要望書を本日送付致しました。後日、一部議員に対しては手交する予定です。PDF版はこちら
立憲民主党
代表 枝野幸男 殿
党所属国会議員 殿
エンターテイメント表現の自由の会
代表 坂井崇俊
女性支部代表 岩永千絵美
要望書
【要旨】
2021年7月29日の貴党記者会見で枝野代表より「女子差別撤廃条約や、国連女性差別撤廃委員会による日本政府に対する累次の勧告などを踏まえた認識の共有」を進めていく旨の発表がありました。弊会は、女子差別撤廃条約の理念同様、性に基づく区別等によって人権および基本的自由の享受等が妨げられることはあってはならないと考えています。しかしながら、その実現手段については、考えを異にするところであり、貴党に対しても以下二点を要望致します。
- 女子差別撤廃委員会は、日本に対して、女性に対する強姦や性暴力を内容とするテレビゲームや漫画の販売停止を要請しているが、実在の女性や児童などに対する直接的な性被害のないものについては、その対象としないこと
- 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書については、日本の文化を十分に理解しない判断が下されるなど、日本の司法制度全体と関わる問題の為、批准するよう働きかけないこと
【詳細】
弊会は2013年からマンガ・アニメ・ゲームなどのエンターテイメント表現の自由を守る活動を行っている団体です。弊会の活動である「#表現の自由を守るための約束」1) には多くの貴党所属の地方議員に賛同頂き、また、年二回行っているコミックマーケット前での超党派街頭演説(現在はオンラインにて実施)2) にも多くの 貴党所属の国会議員・地方議員の方に演説をして頂いており、ご協力感謝いたします。
さて、2021年7月29日の貴党記者会見で枝野代表より「女子差別撤廃条約や、国連女性差別撤廃委員会による日本政府に対する累次の勧告などを踏まえた認識の共有」を進めていく旨の発表がありました。弊会は、女子差別撤廃条約の理念同様、性に基づく区別等によって人権および基本的自由の享受等が妨げられることはあってはならないと考えています。
日本は過去に女子差別撤廃委員会より「女性に対する強姦や性暴力を内容とするテレビゲームや漫画の販売を禁止」3) 、また「固定観念が引き続き女性に対する性暴力の根本的原因であり、ポルノ、ビデオゲーム、漫画などのアニメが女性や女児に対する性暴力を助長している」4) との勧告を受けています。
マンガやアニメ、ゲームの創作の過程で実際の児童に対する性的虐待がないことは明らかです。また、女性に対する性暴力の根本的な原因が固定観念であるという誤った認識は、この問題を矮小化し問題解決を遠ざけることとなりかねません。さらに、ゲームやマンガ、アニメが女性や女児に対する性暴力を助長しているとの指摘に関してその根拠は存在しません。
これらの勧告は特定の宗教観・保守的な道徳観に基づいたものと考えるべきであり、日本の外務省の女子差別撤廃委員会に対する対応は問題無いと評価されるべきです。貴党もその対応を評価すべきであると考えます。むしろ、マンガやアニメ、ゲームの豊かで多様な表現は今日、海外の多くの国で高い評価を受けており、積極的に発展を促していくべき産業です。
同時に、個人などの通報制度を認める女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書についても、これまで述べたような特定の宗教観・保守的な道徳観に基づいた判断をされることや、日本の司法制度全体と関わる問題の為、批准するべきではなく、貴党に対しても批准を働きかけないよう要望いたします。
日本のマンガ・アニメ・ゲームは、現代の日本文化の中で育まれ、子ども向けだけではなく大人向けの娯楽としても確立されています。また、私たちの多くは、空想の世界について描いたり読んだりすることと、現実の社会で実際に行動を起こすこととは全く異なるものであり、後者には責任が伴うことを理解しています。
マンガ・アニメ・ゲームなど日本の民衆文化では、男らしさや固定的なジェンダー観よりも、同性愛やトランスジェンダーを広く寛容に受け入れる傾向が大いに見られ、それらの表現は実際に日本社会における伝統的な男らしさや固定的なジェンダー観を置き換えて、文化のうねりを引き起こしています。また、性的少数者や、性的虐待サバイバーが、自分が受けた偏見や被害を再認識するような表現が、作者自身とその読者に対しても、自分の存在について肯定的に捉える場として役立っていることも重要な点であることを指摘しておきます。
上記を踏まえ、貴党に要旨記載の二項目を要望いたします。
2) 2020年冬 超党派での #エアコミケ街宣 スケジュールのご案内 - https://afee.jp/2020/12/21/10984/
3) 女子差別撤廃委員会の最終見解(2009年8月)
4) 日本の第 7 回及び第 8 回合同定期報告に関する最終見解 (2016年3月)