AFEEでは、東京都知事選挙候補予定者(※)に対して、青少年健全育成条例の不健全図書指定に関連する政策提言書を送付しました。
※住所不明等の候補者にはお送りできていません
政策提言
代表 坂井崇俊
弊会は来るべき都知事選の立候補予定者に対し、東京都の青少年の健全育成と不健全図書指定制度について、以下の公約を掲げるよう提言します。
政策提言: 『旧来の社会情勢に基づいて制定・運用されている東京都青少年健全育成条例とその運用を見直す』
(0)東京都青少年健全育成条例と不健全図書指定制度とは
東京都では、青少年(18歳未満)の環境の整備を助長するとともに、青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止し、もつて青少年の健全な育成を図ることを目的として、東京都青少年の健全な育成に関する条例(以下、「青少年健全育成条例」と言う。)を制定しています。
同条例では青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められる図書類を東京都青少年健全育成審議会(以下、「審議会」と言う。)の意見を聴いた上で、不健全図書として指定し、青少年に対する販売等の制限をしています。
(1)不健全図書指定制度全体の問題
・不健全図書指定制度は、1964年(60年前)に制定された青少年健全育成条例に基づいており、長期間にわたって同様の制度が維持されています。この間、日本社会は大きく変容し、青少年健全育成に対する考え方も大きく変わりましたが、制度は根本から見直されていません。
・審議会で不健全指定された図書は昨年度で6冊のみ(うち、当初主に想定されていたと思われる男性向けは1冊)とピーク時の4%以下(過去最多は157冊・1981年度)に留まっています。現況にそぐわない制度が、効果の検証がなされることなく運用され続けていることを懸念します。
(2)青少年健全育成審議会の公正性、透明性の問題
・審議会に諮問される図書は、東京都職員によって予め選定されており、その選定のための内部基準は公開されておらず、その妥当性の検証は出来ません。東京都職員によって選定し、諮問された図書は、審議会を経て、ほぼそのまま不健全図書として指定されています。基準のあいまいさ、不透明さにより、著者および出版社は不健全図書指定を恐れ、表現活動の萎縮を招いています。
・青少年健全育成条例では審議会に東京都の職員も任命できるとされ、実際に審議会への諮問実務を担う都民安全推進本部の職員も委員として審議会に参加しています。また、2021年4月に策定された東京都こども基本条例の理念に反し、青少年の真の代弁者となる委員はおらず、公正な委員構成となっているかに疑念があります。
・実際の図書の制作にあたっては、著者や出版社は青少年への影響を検討したうえで表現内容を決定していますが、審議会においてその声が直接反映されることがありません。現状では、行政側からの一方的な手続きで不健全図書指定される制度となっています。
・審議会の議事進行のうち、諮問図書(不健全図書)の審議に関する議論は、審議会委員の決定により非公開とされ傍聴できないようになっており、議事録においても発言した委員の多くは匿名になっているなど、情報公開に関して疑問があります。審議会の公開部分もオンライン傍聴が実現されておりません。また、18歳未満は議事録を読むことができるにも関わらず、合理的な理由なく現地で傍聴することが禁止されています。また、審議会の議事録は3年で破棄できるものとされており、不健全図書指定による販売等の制限が無期限に続くのに対し、指定の裏付けとなる議論の資料は残っておらず、将来、指定の妥当性についての検証が出来ません。
(3)東京都の不健全図書指定制度が社会に及ぼす過度な影響の問題
・東京都が不健全指定した図書について、全国に通信販売を行う大手販売業者が条例の範囲を超えた自主規制により販売を取り止めており、東京都による指定の影響が及ぶ範囲は東京都内に限定されず、結果的に全国の成人を含む消費者に影響しています。同様の措置は複数の都内大型の店舗型書店でも報告されています。
・東京都では指定にあたり「不健全な図書類」という呼称を用いていますが、不健全という文言の使用が指定された図書類や著者への不当な評価につながり、条例が意図する範囲を超えて、表現・販売活動の萎縮を招いています。
弊会としては、上記の理由から旧来の社会情勢に基づいて制定・運用されている東京都青少年健全育成条例とその運用を見直す旨、公約に掲げることを提言します。