来たる夏の参議院議員選挙に向けてAFEEでは各国政政党向けに11の政策提言を提出致しましたのでご報告致します
2022年参議院選挙に向けた政策提言
エンターテイメント表現の自由の会
代表 坂井崇俊
1.男女共同参画を理由にした創作物規制について
近年”萌え絵”などの創作物が女性の権利を侵害するまたは、女性に対する性犯罪を助長する可能性があるなどとして、創作物を規制すべきとの議論がある。前半の主張は創作物に人権は無く全く的を射ていない、後半については可能性の段階で憲法にも保障された表現の自由を制約する理由とはなり得ないため、このような理由による創作物規制は行うべきではない。また、ジェンダー・ギャップ指数(GGI)についてはその算出方法が必ずしも適切では無いとの指摘もあり、安易に当該指数を日本の男女共同参画の進捗度として用いるのは適当ではない 。
2.青少年のインターネット・ゲームに対する一律の時間規制について
WHOのICD-11にてゲーム障害(gaming disorder)が分類されたことをきっかけに、青少年のゲームやインターネットについて、一律の利用時間制限をかけようとする動きが活発化している。しかしながら、現時点では一律の利用時間制限がゲーム障害を予防するという科学的知見は存在しない。また、うつ病やADHDなどの精神疾患で引きこもりになった青少年からはゲームに居場所を求めるケースが多いことも報告されており、一律の利用時間制限は青少年の権利侵害にもつながりかねないため、行うべきでない。むしろ、学校や家庭環境の問題改善、青少年の発達特性を考慮した環境調整を行うべきである。
3.マンガやアニメ・ゲームの海賊版への対応について
漫画村騒動で日本のコンテンツのデッドコピーが主に海外サーバーにおいて誰もが閲覧出来る状態になっていることが明らかになった。漫画村自体は閉鎖されたが、現在ではその当時よりも多くの海賊版が存在していることが明らかになっている。 この行為は作者や出版社等の知的財産権を侵害していることは明らかであり、国際的な協調による取締りを図るべきである。
4.クリエイターの地位向上について
マンガやアニメ、ゲーム等クリエイターの待遇を巡っては十分でないとの調査結果もあり、クリエイターに対する支援を実施するべきである。特に個人事業主として仕事を行っている者の契約についての適正化および二次使用料をクリエイターが受け取ることができるような環境整備を行うべきである。
5.同人誌即売会への支援について
同人文化(主にアマチュアがコンテンツを制作し、お互いに見せ合う文化)は日本のコンテンツ産業を支える根幹的な文化である。しかしながら、その文化の”交流の場”である同人誌即売会はコロナ禍において壊滅的な影響を受けている。文化振興の一つとして、この同人文化の場である同人誌即売会に対する支援を実施するべきである。
6.コンテンツアーカイブの仕組みの導入について
マンガやアニメ・ゲームは日本の 重要なコンテンツである。しかしながら、その制作の過程で用いられた原画やネーム、設定資料などの中間成果物や最終的な創作物について網羅的にアーカイブされておらず、重要な資料が散逸・消失している実態がある。このような状態を回避するためにメディア芸術ナショナルセンター構想など、コンテンツアーカイブのための仕組みを構築するべきである。
7.匿名表現の自由について
特にインターネット上での匿名表現は表現の多様性を促進し、表現者の属性や人格に関係なく表現する権利を保障するためにも必要な自由である。一方、誹謗中傷や名誉毀損といった犯罪や不法行為に対しては裁判所を通じて発信者の特定をさらに容易にする事が必要である。特に海外のプラットフォーマー上で行われる犯罪や不法行為についての発信者特定については国際的な協調による解決を図るべきである。
8.「児童ポルノ」の定義および名称について
児童ポルノ禁止法における児童ポルノという名称は、あたかもそういったポルノの分野が存在することを想起させるとともに、”実際の児童”に対する性虐待を網羅的にカバーしていない。そこで、児童ポルノ禁止法において、児童ポルノという名称を児童性虐待記録物に改め、性虐待が行われた音声や顔のみの映像など現在規制対象外となっている記録物にも対象を広げると共に、現在同様、実際の被害を伴わない創作物については規制の対象としないことを明確にするべきである。
9.パロディ・二次創作の合法化について
現在、日本の著作権法においてパロディや二次創作は曖昧な立場にあるという認識である。近年、フランスやイギリスなど多くの国が二次創作などパロディを合法化している。日本も二次創作などパロディを合法化することでクリエイターが萎縮すること無く活動できるようにするべきである。
10.著作権法への第三者意見募集制度の導入について
2021年5月に成立した改正特許法で、裁判所が特許権侵害訴訟で専門家などから意見を集める「第三者意見募集制度」が導入された。IT化の進展など著作権においても従来は想定されていなかったような論点が浮上することが増えている。現に他人の写真を無断で転載した人のツイートをリツイートする行為が著作者人格権の侵害に当たるとの判断が下されるなど、IT時代に即した判断を行うためにも同制度を著作権法に適用するべきである。
11.わいせつ物頒布等罪の廃止等含めた議論について
刑法175条(わいせつ物頒布等罪)は適用範囲が広く、表現の自由に対して強い委縮効果を及ぼしている。また、その保護法益やわいせつの定義などについて多くの議論がなされているところである。表現の自由に強い委縮効果を及ぼす刑法175条について、その廃止に向けたメリットや問題点、課題などについての議論を国会内外において開始するべきである。
以上