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鳥取県青健条例についての経済団体・民間企業に対する意見書

鳥取県では、本県議会定例会において、県外の事業者に対して鳥取県の不健全図書の販売を明示的に禁止する条例を審議しています。現実的に民間企業が遵守することが難しい条例を制定することは民間企業の萎縮に繋がることから、AFEEは経済団体・民間企業に対して以下の意見書提出のお願いの意見書を発表することと致しました。

鳥取県青少年健全育成条例改正についての意見書

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令和2年9月29日
PDF版は鳥取県青少年健全育成条例についての意見書
エンターテイメント表現の自由の会
代表 坂井崇俊

私たちエンターテイメント表現の自由の会(AFEE)は日本国内で表現の自由および情報アクセスの自由を主張し、特にマンガ・アニメ・ゲームなど、エンターテイメントの全ての分野において消費者の権利・利益を守る活動を行う消費者団体です。

去る9月11日に鳥取県令和2年9月定例県議会において、「鳥取県青少年健全育成条例の一部を改正する条例」が付議されました。本改正案が可決されると、鳥取県外のインターネットを通じて図書等を販売する事業者に対して、鳥取県の青少年への有害図書等(限定列挙されている訳ではない)の販売が罰則を持って禁止されます。

仮に本条例に類する条例が各都道府県などの地方自治体で成立すれば、事業者は自治体個別のルールに基づいて販売制限をしなければならないばかりか、海外事業者などは個別のルールに従わず、国内外でのイコールフッティングの観点からも問題があると思われます。

ついては、本条例案に対して御団体名での反対の意見表明をお願いしたく、よろしくご検討のほどお願い致します。

以下、簡単に本条例案についての問題点を指摘させていただきます。

1.販売が禁止される図書等は限定的に列挙されていない

鳥取県の青少年健全育成条例では、図書やDVD等について一部はそのタイトルを個別具体的に明示する(13条1項)ものの、包括指定されるもの(13条4項1・2号)については、個別具体的に明示されず、その判断は事実上事業者に委ねられている。図書の20%以上、映像の3分以上等が「有害図書類の指定基準」というあいまいな基準で有害図書に該当するかどうかの判断を事業者に委ねることは現実的ではない

2.他県へ本条例同様の条例が広がる可能性がある

長野県を除く46都道府県では青少年健全育成条例による有害図書の販売規制を行っているが、その基準はまちまちである。また、市区町村レベルでも規制を設けている場合もあり、それら自治体個別の基準に事業者が対応することは現実的ではない

3.本人確認が容易ではない(年齢・県民)

本条例において青少年とは婚姻していない18歳未満のものを指すが、インターネット上において事業者が、鳥取県民であることと青少年であることを特定することが難しく、罰則をもって禁止されることを考慮すると萎縮の可能性が大きい

4.その他

  • 代表者を送り出せない鳥取県議会議員による県外の事業者への規制である
  • 海外事業者が条例に従わずイコールフッティングの観点で問題となる可能性がある
  • 「従前の解釈の明文化」(担当課)でありパブリックコメントが行われていない
  • 13条1項、4項3号で指定された図書類等のリスト収集も現実的には困難

■(参考)青少年健全育成条例関係

改正案 https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1217168/R209gian8.pdf
現行条文 https://www1.g-reiki.net/tottori/reiki_honbun/k500RG00000381.html
施行規則 https://www1.g-reiki.net/tottori/reiki_honbun/k500RG00000382.html
有害図書類の指定基準 https://www1.g-reiki.net/tottori/reiki_honbun/k500RG00000383.html
有害図書類の団体指定 https://www.pref.tottori.lg.jp/28423.htm
鳥取県広報(青少年に有害な図書類の告示) https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1176665/R2.9.1.pdf

○改正案(抜粋)

改正後(案) 改正前
(有害図書類又は有害玩具刃物類の販売等の禁止)
第16条 図書類又は玩具刃物類の販売等を業とする者は、有害図書類又は有害玩具刃物類を青少年に販売し、頒布し、貸し付け、又は交換により入手させてはならない。

2 前項の規定は、インターネットの利用その他の方法により鳥取県内において前項に規定する行為を行った全ての図書類又は玩具刃物類の販売等を業とする者に適用する。

有害図書類又は有害がん具刃物類の販売等の禁止)
第16条 図書類又はがん具刃物類の販売等を業とする者は、有害図書類又は有害がん具刃物類を青少年に販売し、頒布し、貸し付け、又は交換により入手させてはならない。

○現行条文(抜粋)

(定義)
第10条 この章以下において「青少年」とは、18歳未満の者(婚姻した者を除く。)をいう。

2 この章以下において「図書類」とは、書籍、雑誌その他の刊行物、図画、写真、フィルム及び映像等記録媒体(録画テープ、録画盤、録音テープ、録音盤、ゲームソフト(専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物)その他の映像又は音声が記録されている物品で機器を使用して当該映像又は音声が再生されるものをいう。以下同じ。)をいう。

第13条 知事は、図書類の内容の全部又は一部が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該図書類を青少年に有害な図書類として指定することができる。
(1) 著しく青少年の性的感情を刺激し、その健全な成長を阻害するおそれのあるもので、規則で定める基準に該当するもの
(2) 著しく青少年の粗暴性又は残虐性を誘発し、又は助長し、その健全な成長を阻害するおそれのあるもので、規則で定める基準に該当するもの
(3) 青少年による薬物の使用を著しく誘発し、又は助長し、その健全な成長を阻害するおそれのあるもので、規則で定める基準に該当するもの

2・3 略

4 次の各号のいずれかに該当する図書類は、第1項の規定による指定がない場合であっても、青少年に有害な図書類とする。
(1) 書籍、雑誌その他の刊行物であって、全裸若しくは半裸の状態での卑わいな姿態又は性行為、わいせつ行為若しくは性欲に基づく変態的行為を被写体とした写真又は描写した絵で規則で定めるものを掲載するページ(表紙を含む。以下同じ。)の数が20ページ以上あるもの又は当該書籍、雑誌その他の刊行物のページの総数の5分の1以上を占めるもの
(2) フィルム又は映像等記録媒体であって、全裸若しくは半裸の状態での卑わいな姿態又は性行為、わいせつ行為若しくは性欲に基づく変態的行為を描写した場面で規則で定めるものの描写の時間が合わせて3分を超えるもの又は当該場面の数が10以上のもの
(3) 図書類の閲覧又は視聴に適した年齢区分等の審査を行う団体で知事が指定するものが青少年に販売し、譲渡し、頒布し、貸し付け、若しくは交換により入手させ、又はこれを青少年に見せ、聴かせ、若しくは読ませることが適当でないと認めた図書類であって、当該団体が定める方法によりその旨が表示されているもの

5 知事は、前項第3号の規定による指定をしたときは、その団体の名称及び当該団体が表示する方法を告示するものとする。

(有害図書類又は有害がん具刃物類の販売等の禁止)
第16条 図書類又はがん具刃物類の販売等を業とする者は、有害図書類又は有害がん具刃物類を青少年に販売し、頒布し、貸し付け、又は交換により入手させてはならない。

第26条
2 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 常習として第16条又は第17条第1項の規定に違反する行為をした者

5 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(1) 第16条、第17条第1項、第21条の2第1項又は第21条の3の規定に違反した者

○有害図書類の指定基準

鳥取県青少年健全育成条例の規定による有害図書類の指定基準

1 著しく青少年の性的感情を刺激し、その健全な成長を阻害するおそれのあるものに係る基準
全体的な内容が性を興味本位に取り扱うことを主眼としていると認められるもので、次の各号のいずれかに該当するもの
(1) 肉体の全部又はその大部分を露出し、又は透し、著しく卑わい又はせん情的に表現しているもの
(2) 性行為若しくはわいせつ行為又は性欲による変態的行為を具体的かつ露骨に表現しているもの
(3) せりふ、説明、発声、歌曲等で著しく卑わい又はせん情的な表現をしているもの
(4) その他素材、表現等が(1)から(2)までと同程度以上に青少年の性的感情を刺激するもの

2 著しく青少年の粗暴性又は残虐性を誘発し、又は助長し、その健全な成長を阻害するおそれのあるものに係る基準
全体的な内容が殺人、暴力等を興味本位に取り扱うことを主眼としていると認められるもので、次の各号のいずれかに該当するもの
(1) 殺人、傷害、暴行、拷問、処刑等の行為又は場面を露骨に表現しているもの
(2) 殺人、強盗、傷害、暴行その他の反社会的行為の準備又は実行行為の手段若しくは経過を詳細かつ著しく刺激的に表現しているもの
(3) その他素材、表現等が(1)又は(2)と同程度以上に青少年の粗暴性又は残虐性を誘発し、又は助長するもの

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