12月12日、毎日新聞の朝刊で、アニメ・ゲームで描かれた実在しない児童についての創作物が児童ポルノであると誤解される署名記事が掲載されました。(本稿末尾に当該記事を掲載)
[st-card-ex url="https://mainichi.jp/articles/20181212/ddm/041/040/141000c" target="_blank" rel="nofollow" label="" name="" bgcolor="" color="" readmore="続きを見る(現在は有料記事)"]AFEEはこれまでも実在の児童が被害者として存在する児童ポルノと、あくまでも空想上の人権が存在しない創作物とは明確に区別するべきだと主張してきました。もちろん、児童が実際の被害者となることは防がなければならず、被害児童に対しては必要なサポートを最大限行うべきです。
しかしながら、アニメ・ゲームなどに表現される実在する被害者のいない創作物を児童ポルノと同列に扱い、それらの表現の制限を行うことは、実際に児童の人権を侵害する児童ポルノを食い止めることにつながらないばかりか、実在の児童の人権保護がおろそかになり、逆に問題であるとも指摘されています。
また、仮に人権が存在しない想像物の創作が児童ポルノ法上の製造に該当する違法行為となりえるとの誤認が広まれば、自由な創作活動の萎縮に繋がることは明らかです。殺人行為が否定されるからといって、殺人シーンのある小説・アニメ・ゲームの表現は(少なくとも成人に対しては)規制されるべきでないのと同様に自由な表現は守られるべきです。
現在の児童ポルノ禁止法では児童ポルノの性的目的での単純所持については罰則をもって禁止しています。そういった状況の中で、当該記事にあるような児童ポルノと創作物を混同させる報道を行うことは、大手メディアとしての責任を全うするものではありません。
念のため、本件情報元とされる警察庁担当課への確認を行いましたが、児童ポルノ禁止法上、存在しない児童の創作物は児童ポルノの定義に含まれず、また、そのような創作物が児童ポルノであるとの説明はしていないとの回答を得ました。
以上の点から、AFEEは毎日新聞に対し次に記載する公開質問状を提出するとともに、当該記事に強く抗議し、訂正を求めます。
児童ポルノの定義に関する公開質問状
2018年12月17日
株式会社毎日新聞社
代表取締役社長 丸山昌宏殿
記者 内橋寿明殿
校閲部門責任者殿
児童ポルノの定義に関する公開質問状
エンターテイメント表現の自由の会
編集長 坂井崇俊
2018年12月12日付け、毎日新聞東京本社14版の「児童ポルノ 教師ら4.7% 警視庁まとめ 所持容疑で検挙」の記事中、児童ポルノについての記載がされており、本件について以下の通り公開で質問致しますので、本年12月30日までにご回答頂きたくよろしくお願い致します。
なお、頂きました回答につきましては、本会の公式サイト等で公開させて頂く予定ですので予めご了承ください。
記
- 当該記事において「きっかけはネットやDVD、アニメやゲームで児童ポルノを目にしたことが多かった」との記載があるが、児童ポルノ禁止法(*)においては、実在しない児童を描いたものについては児童ポルノとして定義していない。毎日新聞社においては、実在しない児童を描いたものも児童ポルノとして認識しているのか
- 今日、日本において流通しているアニメ・ゲームにおいて、日本の国内法における児童ポルノに該当するものは存在しないと認識している。当該記事は明らかに事実誤認であり、読者に児童ポルノに該当するアニメやゲームが存在しているとの誤った認識を与える可能性がある。この点を踏まえて、当該記事の訂正を行う予定はあるのか
以上
(*)「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(平成11年法律第52号)第二条(定義)参照
本件についてのお問い合わせ先
エンターテイメント表現の自由の会 担当:西形
(連絡先)
※本件についての回答書はこちらから